私が「会社がつらい時こそ、会社を辞めなくてよい方法」を考える理由

楽しくて楽しくて毎日がたまらないと思えるような仕事をしている方は、日本にはどのくらいいるのでしょうか。

 

「今の仕事がつらい」

と考えたとき、全ての方に当てはまる訳ではありませんが、私がまず模索する解決策は、「会社を辞めなくてもよい改善方法」です。

 

それには理由があります。

 

仕事で苦しんでいる方に対して、「つらくて死んでしまうくらいなら、仕事なんて辞めてしまえばいい」とアドバイスされる方がいらっしゃいます。命を失うくらいだったら仕事なんて辞めるべきという考えは、私も同感です。

 

しかし、私の経験上、本当に追い詰められている方にはこの言葉は届いていません。辞めればいいのではなく、「つらいけれど辞められない」から苦しんでいるのです。

 

死にたくなる程とは言わないまでも、自己否定を繰り返してまで仕事に悩む方は、ほぼ間違いなく真面目な方が多いです。別の言い方をすると、これまで人生を積み上げてきた方です。

真面目な方ですから、その方がとびきり優秀であろうがなかろうが、ある年齢になればある程度の立場や収入を得ていることが多いです。

 

この、積み上げに積み上げた先に現在の自分があるということが「簡単に辞められない(捨てられない)要因」の一つです。

 

加えて外部環境にも要因があります。


私の転職活動時にも心の底から感じたことですが、日本は転職者に対しての風当たりが強い国です。転職を重ねることそのものが悪と判断されるといっても言い過ぎではありません。

事実、転職支援サイトに登録された求人情報には、「転職○回まで」という条件を出している会社が多数存在します。

するとどうなるかというと、本人に能力的な問題がなくても、「転職者=能力が低い」とレッテルが貼られ、転職によって収入が下がる方向に繋がりやすくなります。社会的なステータスが低下しやすくなります。

 

優秀なのに転職した人と、優秀ではないけれど辞めずにずっと働いていた人とでは、後者の方が高評価であるのが多くの日本企業です。新しく組織に加わった人間は評価が難しいということももちろん要因の一つでしょう。

 

もちろん全ての方に当てはまる訳ではありません。正しい転職をして給料が上がる方もいらっしゃいます。そもそも、そのような方はおそらくこの記事を読む必要はないでしょう。

 

実際、転職する度に待遇が下がっていくということはよく聞く話で、(私にも経験があるので恐縮ですが)漠然と「今の会社がつらいから、とりあえず他の会社に転職しよう」という計画性のない転職をした時に発生しやすいです。

 

収入が急に下がるとどうなるか。現在の生活水準は維持できなくなります。場合によっては、家を引っ越す必要があるかもしれません。

趣味をあきらめる必要があるかもしれません。

子供がいる場合、引っ越しすれば子供達は転校することになるかもしれません。子供の大学の学費が払えなくなるかもしれません。

子供は行きたい大学をあきらめてしまうかもしれません。

 

これまで積み上げてきたものの多くに多大な影響を与えることになります。

 

多くの方が「子どもの転校や引っ越しくらいなら、死ぬより良いじゃないか」と考えるでしょう。そう考える方の心は正常です

おそらく仕事で追い詰められている方のご家族もそう思っています。

 

しかし、心が正常でない方にとって、人生をかけて積み上げたものが崩れるということは、これまでの人生を全否定されたのと同じような感覚です。

これまで人生をかけて積み上げたものをなくすことは、人生の全否定と同じ感覚。ひいては社会的に死んだような気になる訳です。

 

もちろん生活水準を下げることが、人生の全否定ではありません。

 

でも本当に追い詰められている方の多くはそう思っています。このまま仕事を続けていても「死にたい」と思い、仕事を辞めたとしても「社会的な死」が待っていると考えていたとしたらどうでしょうか。

どちらにも救いがなく、逃げ場がないのです。

 

良い転職をするのであれば、心が正常である必要があります。まずは仕事を辞めずに労働環境を好転させて、心を正常に戻すことはとても重要だと思います。いっぱいいっぱいになってしまった状態で、冷静な転職判断はできません。

 

もちろん、人によってはすぐに仕事を辞めて転職することが最善である方もいらっしゃいます。私も、すぐに仕事を辞めるという手段を否定するつもりはありません。

 

同様に、仕事を辞めずに心を正常に戻すというのも一つの手段です。どちらも目的ではなく、手段です。最終目的は今のつらい環境を打破することなので、どんな手段をとっても良いはずです。しかし、多くの方は、仕事を辞めるという手段しか無いと思い込んでいます。

 

仕事を続けながら、ストレスを減らす方法はいくらでもあります。精神的なハードルは会社を辞めてしまうことに比べたら容易なものです。どうしても転職したいのであれば、心が正常に戻り、周りが見えてくるようになってから、正しい転職先についてもう一度考えればよいです。

 

もし、周りで仕事に悩んでいる方が、仕事を辞めるしか手段がないと思っているのであれば、そうではないということを伝えてあげてください。