退職手続きの代行が、商売として成り立つヤバい国
会社を退職するという経験をしたことのある方であれば、誰もがどこかのタイミングで、退職届を提出するなどの一連の手続きをしていると思います。
結婚を機に退職するなど、いわゆる自然な退職であれば、この作業は難しいものではありません。
ところが、うつ病になる(なりそうな)ほど追いつめられている状態で退職する場合、この手続きの精神的ストレスはかなりのものになります。
簡単に言うと、最高に気まずいのです。
私は過去に、退職手続きを行った経験があります。
当時の会社では、「退職の場合は事前に上司に報告したうえで、退職の2週間前までに書面で退職届を提出すること」と決められていたのですが、このまま何も会社に言わずに逃げてしまいたいと思うくらい、嫌な作業でした。
会社から離れたいのに、その会社を辞めるには、会社に行かなければならないという矛盾。
そして退職日の2週間前に書類を提出した後も、2週間は会社に所属していなければなりません。はたしてどんな感情で出勤すればよいのでしょうか。有給はたくさん残っていたはずですが、結局使うことはできませんでした。
世の中には、退職届の提出で悩む方がたくさんいらっしゃいます。最近ではそのサービスが代行業として商売になっているようで驚きました。
はっきり申し上げて、退職の手続きは、仮に代行したとしてもお金を取るほどのサービスではありません。要は退職の意思を会社に伝えればよく、退職時に発生する手続き書類にいくつかサイン・押印をし、郵送で提出すればそれで完了です。
日本でこのぼったくりのような商売が成り立ってしまうという状況が、今の日本の労働環境のヤバさを物語っていると思います。
会社と従業員との信頼関係が完全に崩壊しているのです。
退職届の提出にすら怯えるというのは、もはや従業員は1ミリも会社を信用していないということです。
ここまで追い詰められているのであれば、退職することは間違いでないのかもしれません。
ひとまず退職手続きに関して、有料の代行サービスを受けるか否かについては、個人の選択なのでどちらでも良いかと思いますが、いずれにしても退職手続きは必ず行いましょう。
何故なら、後々自分が困ることになるからです。
困る理由は、退職時に発生する様々な手続きに関係しています。
ちなみに、従業員が退職すると会社はどのような手続きを行うのでしょうか。
まず、従業員が退職すると、会社は管轄の年金事務所に対して、社会保険の資格喪失手続きを行うことになります。従業員は会社に勤めている以上、社会保険に加入し、保険証をもらっているかと思いますが、この保険証を返却しなければなりません。
喪失手続きを行っておかないと、例えばその後、他の会社に転職した時に、二重の社会保険加入になってしまうので、最悪手続きができない恐れがあります。
と同時に、会社はハローワークに雇用保険の喪失手続きを行います。雇用保険の喪失手続きを行うと「離職票」という書類が発行され、それが退職者に渡されることになります。
離職票の手続きのためには、退職者本人の記入と押印が必要で、本人の記入押印がないとハローワークで離職票発行の手続きができません。
よって、本人が記入押印しない限り離職票はもらえないのですが、この離職票がないと失業保険(失業手当)を受給できなくなります。
通常、会社を辞めてしばらくは、ハローワークにて手続きを行うと失業保険を受給することができます。
私も会社を退職した時に受け取りましたが、まとまった額の受給なので、結構ありがたいものです。離職票がないと受給できないので、大変な損失になります。
そして、上記の手続きを終え、最後に退職者が会社から受け取るものが、源泉徴収票です。
一つの会社からのみ給料を受け取るサラリーマンであれば、所得税の区分が、いわゆる「甲欄適用」となっており、会社に所属しているうちは毎年12月に手続きを行う「年末調整」によって、一年間の税金が精算されますが、退職してしまうとその会社では年末調整はできません。
退職後、年末まで無職の状態であれば「確定申告」を行うことになりますし、新しい会社に就職した場合は、その新しい会社で「年末調整」を行うことになりますが、いずれにしても、退職した会社の源泉徴収票が必要になります。
退職手続きをしっかり行っておかないと、辞めた会社の担当者がその源泉徴収票を送ってくれないという事態にもなりかねません。
退職手続きをキッチリ行うということは、退職した会社との関係をきれいに断ち切るということです。辞めた会社がブラック企業であればあるほど、しっかり関係を断ち切っておかないと、かえってストレス要因がずっと残ったままになってしまいます。
仕事で追い詰められている方にとっては、この何でもない退職手続きですらとてつもなく高いハードルであると感じてしまうかもしれません。
ですが自分のためと思って、代行など、どんな形であっても必ず手続きは行ってください。