営業未経験者が、転職先に営業職を選ぶことはアリか

転職活動を始めた多くの方が、転職支援サイトというものに登録されると思います。
この転職支援サイトでは、多くの求人情報を見ることができます。

 

どんな場所でどんな仕事を探している方であっても、給与を全く気にしないという方はあまりいないと思います。2018年9月現在、未経験者応募可能という求人情報を調査してみると、他の職種に比べてずば抜けて高い給与条件が記載されている職種があります。

それは営業職です。

 

未経験でも転職直後に高い給与が手に入るというのは、それだけで魅力的です。現在の給与に不満があり、高い給与を求めている方は常に一定数いらっしゃるので、応募される方も多いと思います。

 

とは言え、私のようにひねくれた人間にとっては、逆に構えてしまいます。うまい話には裏があるのではないかと。


転職のミスマッチをなくすためにも調査が必要だと思い、転職活動の時にもたくさん調べたのを覚えています。

 

ちなみに、私が新卒で入った会社で、まず行ったのが営業の仕事でした。とは言え新卒で何もわかっていない状態でしたので、責任の重い立場であったわけでもなく、先輩について行っただけですので、営業で苦しむ程仕事したという記憶もありません。上司の方はとても大変そうだったことは覚えています。


その後の人事異動で営業職からは離れ、自分の希望の部署になり、それ以来営業という仕事をしたことはありません。今回の記事を書くにあたり、改めて多くの現役営業職経験者のお話を聞き、参考にさせていただきました。

 

営業職のメリット・デメリットをまとめた記事を見かけますが、それがメリットなのかデメリットなのかは人によって異なります。「これがメリットです!」と言い切っている記事は、物事を一方向からしか見ていません。Aさんにとってはメリット、でもBさんにとってはデメリットであることはよくあります。

 

また、そのメリット・デメリットと指摘している特徴が、他の業種にも当てはまる場合があります。特徴が他の業種にも当てはまるとしたら、それは営業職特有のメリット・デメリットではありません。他の職種との比較材料としてはおかしいです。

 

例えば、営業職は大量採用されるが故に、その裏に大量離職があるということは多くの方が知っていると思います。多くの方がこの大量離職をデメリットと感じるかもしれません。

 

しかし、デメリットと断定するにはまず、その理由を調べなければなりません。この場合、大量離職の理由を調べることになります。理由を調査した結果、大量離職の理由が自分には当てはまらないものであるならば、それは自分にとってデメリットではありません。むしろ他の求職者が敬遠してくれるだけメリットを感じることになるかもしれません。

 

この記事を読んでいる方がどのような方なのか、私には分かりません。ですからこの記事では、営業職を批判したりしません。またお勧めすることもありません。フラットな立場で営業職の特徴をお伝えし、就職・転職活動の参考にしていただきたいと思います。

 

<営業職の特徴>
・どの会社にも必ず必須な職種である(一部公務員等を除く)

企業がお客様に対して商品・サービスを提供している以上、営業の仕事がない企業はありません。商品・サービスは営業活動によりお客様に知ってもらって、初めて購買の可能性があります。


ちなみに、公務員では民間企業でいうところの営業職というものはありません。但し営業職に似たようなものはあります。例えば商工政策の分野で、自治体の観光サービスや特産物を外部にアピールするという仕事はありますが、自治体本体が直接販売・提供するわけではないため、ノルマは存在しません。あくまで民間企業の支援をするという立場です。

 

・求人数が他職種に比べてとても多い

営業職はどの会社にも必要なのですから、必然的に求人数も多いです。あらゆる職種の中でその数はNo.1です。

 

・就職・転職が比較的容易である

求人が多いうえ、一度に大量採用することが多い傾向にある営業職は、就職・転職に際しての他の求職者との競争が他職種と比べて少ないです。就職・転職活動が成功しやすい職種であるとも言えます。

 

・つぶしがきく職種である

どの会社にも営業職があるため、一度営業職スキルを身に付けると、他社でも営業職として活躍できる余地があります。転職支援サイトに提示されている営業職求人では、ほぼ間違いなく「営業経験者優遇」というタグが付いていましたので、転職する場合にも前職の経験が無駄になるということが起こりにくいです。


また、営業活動を行うには資料の作成、プレゼン能力等、およそ他の事務職でも必要とされるスキルが必要です。これらのスキルを使って他業種でも活躍できる余地があります。

 

・給与額や昇進が、結果に大きく左右される

営業職は結果が全てという言葉は皆さんご存知のとおりだと思いますが、結果を出し続けることができれば、他業種とは比べ物にならないほど昇給・昇格が早いです。


加えて、結果が全てであるが故、極端な話、仕事中にサボって喫茶店に入っていようが、昼寝していようが、営業数字を上げてさえいれば、あまり文句を言われることはありません。


逆に、どんなに寝ずに頑張ったとしても結果がでなければ、一切評価されない職種でもあります。「商品は売れなかったけど、頑張っていたから評価する」という考えはないと思った方がよいです。もしそんなことをしていたら、頑張って成果を出した優秀な営業職員は他社へ転職することになるでしょう。


<営業職に求められるもの>
・コミュニケーション能力が必要

営業とは、顧客に商品・サービスを売る仕事ですので、避けて通れないのがコミュニケーションです。訪問営業の場合、クライアントを訪ねて、商品の魅力を伝えていかなければなりません。人付き合いは他の職種以上に多いといえるでしょう。


新規採用職員の方が営業職への志望動機について、「自分は人と接することが好きだから」という理由を上げる方がいます。おそらくよほど意地悪な面接官でなければつっこんでくることはないと思いますが、大学生までの人付き合いと、ビジネスとしての人付き合いは別のものだと考えた方がいいでしょう。

 

大学生までの人付き合いは、おそらく自分と共通点のある人間(大学、サークル、バイト等の範囲内の友人)との付き合いがメインとなるでしょう。基本的には利害関係の生じない付き合いです。嫌いな人がいれば関わらなければよく、気の合う仲間とだけ関係を持つことが可能です。

 

一方ビジネスの付き合いは、それとは全く違います。自分の提案した商品・サービスを買うかどうかというやりとりの中に、損得勘定があります。利害関係が対立する相手に営業をかけることもあり、平気で厳しい言葉をかけられることもあります。そして、それでもまたその方のもとに営業に行かざるを得ない状況も発生します。

 

営業のコミュニケーションで大切なのはどちらかというと、相手の心を自分の方に向かせるスキルだと思います。

 

・勤務時間外の対応が必ず発生する

クライアントから問い合わせがあるのは、自分の勤務時間内とは限りません。自分の休みの日でもクライアントが仕事をしていることはよくありますので、携帯電話に電話がかかってくることは覚悟しなければなりません。


また、接待という名の宴会の席にもたくさん参加することになります。接待にかかった費用は経費として計上することができるかもしれませんが、自分の時間は奪われます。

 

・事務処理能力が必要である

営業職だからと言って、クライアント先を飛び回ってばかりではありません。クライアントに説明するための書類やデータのとりまとめは必須の作業です。プレゼン資料の作成能力も必要となります。

 

・営業ノルマを達成する必要がある

私がお話を聞いた限りでは、営業ノルマがない営業職の方はいらっしゃいませんでした。仮にノルマが設定されていなかったとしても、営業数字は自分の給料に跳ね返ってくることを考えると、自分の中で決めたノルマを達成する必要はあるでしょう。


このノルマという考えは、今や営業職だけのものではありませんが、営業職ではそれが非常に顕著で明確です。

 

「ノルマが達成できていない時には、上司に話しかけられるたびにビクビクする。」とおっしゃっている方もいました。

 

・自爆営業というシステムが存在する

自爆営業とは、売上を上げるため、販売員自らが商品を購入することです。

コンビニ店員がノルマのために自爆営業というニュースを聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。

これは前述の「ノルマ」があるが故に発生する悲劇です。法人向け商品の営業の場合、これは当てはまらないかもしれませんが、個人向けに販売する商品の営業の場合、最悪自爆営業が発生するおそれがあります。


これまでの話を整理してみましょう。

 

<営業職の特徴>
・どの会社にも必ず必須な職種である(一部公務員等を除く)
・求人数が他職種に比べてとても多い
・就職・転職が比較的容易である
・つぶしがきく職種である
・給与額や昇進が、結果に大きく左右される

<営業職に求められるもの>
・コミュニケーション能力が必要
・勤務時間外の対応が必ず発生する
・事務処理能力が必要である
・営業ノルマを達成する必要がある
・自爆営業というシステムが存在する

 

この中で、営業職特有のものを抜き出してみます。他の業種でもある程度あてはまるものは、営業職特有の課題としてとらえることが難しくなるため除いています。

 

・どの会社にも必ず必須な職種である(一部公務員等を除く)
・求人数が他職種に比べてとても多い
・就職・転職が比較的容易である
・給与額や昇進が、結果に大きく左右される
・営業ノルマを達成する必要がある
・自爆営業というシステムが存在する

 

さらにこの中から、営業職員の待遇に直結する項目を抜き出します。

 

1給与額や昇進が、結果に大きく左右される
2営業ノルマを達成する必要がある
3自爆営業というシステムが存在する

 

ここで話を一番初めに戻します。

 

現在転職支援サイトに掲載されている営業求人は、他の職種に比べてずば抜けて高い給与条件が記載されているものがあります。

 

それは求人詳細には書いてありませんが、上記1、2(3は特殊なので除きます)でコンスタントに結果を出した場合、「最大で」その収入が手に入るということを意味しています。つまり、「全ては売れることが前提」ということです。

 

では次に何を考えるべきでしょうか。

 

求人を出している企業が、何を売っているかを見るべきです。次に考えるのは、その商品・サービスが自分に売れるものなのかどうか。

もっと言うと、世の中にその商品・サービスは求められているのかどうかを考えるべきです。今売れているからと言って、今後も売れるのかは別です。今売れているのであれば、自分が入社するころにはみんなそれを持っていて、自分が営業をかける場所はもう残っていないかもしれません。

 

営業職を選ぶということは、売る商品を選ぶということです。家具のメーカーに入ったら家具を売らなければなりません。食品を売ることはできないのです。

 

このような観点から、自分が今気になっている営業職への転職がうまく行くかどうか、事前にイメージすることが大切です。


転職はとても大変な作業です。

 

精神的にも体力的にも負担になり、人生で何度も経験することではありませんので、後悔しないように、面倒がらずに慎重に転職先を見極めてください。

皆様の転職が素晴らしいものになるよう、心から願っております。

転職活動してみて分かったこと

私は過去に転職活動を経験しています。

転職活動をやってみて良く分かったことは、

 

「日本は、転職者に対してとても風当たりが強い」ということ。

「年齢を重ねれば重ねるほどその傾向は強い」ということ。そして、

「自分の希望どおりの企業は驚くほど少ない」ということでした。

 

初めの就職、そして転職活動時に私が求めていた希望条件は、以下のとおりです。

  • 正社員であること
  • 副業なしに生活が成り立つ給料であること
  • 有給は消化できること
  • 原則定時退社であること
  • 残業した場合は必ず残業手当がもらえること
  • 休日の呼び出し・電話なしであること

 

就職氷河期の新卒時代から条件をたくさん付けていたのですから、我ながら困ったものです。当時も「そんな贅沢な職場はないよ」と同級生に言われていました。実際に就職した企業も、この条件には全く当てはまりません。

 

でもちょっと待ってください。この条件、そんなに贅沢な条件でしょうか?

私としては、とても基本的でとても重要なことだと思うのですが。

 

「正社員」
→安定した雇用を確保したいと思うのは当たり前のことです。

 

「副業なしで生活が成り立つ給料」
→逆に生活が成り立たない給料とは、どの面下げて人を雇おうとしているのでしょうか?

 

「有給は消化できる」
→有給は法律に基づく労働者の基本的な権利です。組織の中である人だけ有給が消化できないのであれば、属人的な問題かもしれませんが、組織全員が消化できないのであれば、明らかに組織の問題です。

 

「原則定時退社」
→慢性的な残業が発生しているのであれば、人手不足です。経営者が無能であると自分で言っているようなものです。偉い方の報酬を減らしてでも人を追加で雇ってください。有給消化にも影響する問題です。

 

「残業した場合は必ず残業手当」
→残業代を出さない会社とは、お金を払わなくても人に働いてもらえると本気で思っているのでしょうか?理解不能です。

 

「休日の呼び出し・電話なし」
→もしも休日の呼び出しや電話が無条件にあったなら、もはやそれは休みではありません。別の日に改めて休みを与えてください。

 

現在世の中は売り手市場にあるとはいえ、就職活動の厳しさは求職者の年齢によって大きく変わります。昔から日本では新卒信仰が蔓延しているので、大学新卒であれば、何のスキルがなくても比較的容易に(もちろん競争はありますが)大手企業に入ることが可能です。

 

また20代後半の転職であっても、「20代はまだ若い」という理由で、スキルや経験が少なくとも転職が可能です。

 

ただし、これが30代後半にもなるとガラッと環境が変わります。経験やスキルがかなり重要視され、一気に就職先の選択肢が狭まります。風当たりも強くなります。私自身の経験からも明らかにそうです。30代の転職活動は最も精神をすり減らす経験でした。

 

しかし、それはあたりまえと言えばあたりまえかもしれません。
年齢が高ければ高いほど人を育てる時間が少ない訳ですから、企業側として高い経験やスキルを求めることは十分理解できます。

 

ただ、転職活動しながら感じていたことは、高い経験や高いスキルを求めておきながら、劣悪な待遇を涼しい顔で提示している会社のいかに多いことか。

企業側にとって都合の良い求人が世の中には溢れています。

 

今思えば何も役に立っていませんが、私自身、子供のころから割としっかり勉強するタイプでした。

また、30代後半に至るまで、多少無職の期間もあったものの、ほぼ切れ間なく社会人経験を積んできており、それなりにスキルも磨いてきました。合格難易度が高く、ステータスとして一般に認められるような有名な国家資格も保有しております。

 

30代後半の転職活動でも、転職サイトにその資格を登録すると、オファーメール(実際は自動送信メールですが)がたくさん来ました。転職エージェントさんからいただいた「好待遇案件です」と書かれたメールを開いてみると

 

『○○○資格をお持ちの方を募集・優遇(働きやすい環境!)』
と大きく書かれたその下にあった求人詳細には、家族持ちとしてはギリギリの生活しかできないと思えるような給与待遇が堂々と掲載されていました。

そして見込残業代○○時間の文字。さらに見ると有給休暇はギリギリ半分くらい消化できるようです。

 

これが今の日本でいうところの好待遇なのですか?


見込残業代という危険なシステムは、いつから自然に使われるようになったのですか?


少なくとも私の新卒時代にはありませんでしたが…。

 

大丈夫か?(一応)先進国、日本。

 

日本のサラリーマンは、有給休暇を取得できないことに耐性がありすぎるので、「半分も消化できればいいじゃないか。」と思う方がいるかもしれませんが、目を覚ましてください。

 

仮に毎年10日間取得できないということは、1年のうち毎年10日間はタダ働きをさせられていることになるのです。

 

毎年10日間タダ働きさせておいて好待遇?

もしもその方が40年近く勤務すると、タダ働き期間は通算で丸々1年にもなりますが…。
いやいや、ちょっとブラックジョークにしてもキツイです。

 

フォローしておきますが、世の中には本当に待遇の良い会社は確かに存在します。確かに存在しますが、その会社に巡り合える確率、ましてや新卒でいきなりそれを引き当てる確率は、宝くじを当てるごとく難しいです。


お世辞にも、良い労働市場であるとは言えません。