避難所に行ってはじめて分かること

2018年台風21号の被害も収束しないうちに、2018年9月6日午前3時8分ころ北海道で、最大震度7地震が発生しました。北海道で震度6強が観測されたのは、新しい震度基準になってから初めてとのことです。


近畿地方における広範囲の停電がまだ解消されていないうちに、新たに大規模停電が別の場所で発生するという、あまり聞いたことのないような状態になっています。
今も多くの避難所が開設されていると思います。

 

私は過去、「東日本大震災」発生当時、避難所の支援活動を行ったことがあります。
当時の支援活動で伺った避難所はとても悲惨な状態でした。

 

多くの方が、避難所で長期間過ごすという経験がないと思います。

災害が発生すると、行政機関から「避難指示」「避難勧告」等が発令され、危険が予想されるエリアから、避難所への避難を促されます。避難しない人もいますが、自宅に大きな被害があった場合、多くの方が安心を求めて避難所にやってきます。

 

ですが、私の経験上、大災害発生時に人であふれかえる避難所は、とても過酷な生活環境となっています。とてもホッと一息できるような空間は、そこにはありません。

 

まず、とても忙しいです。

 

テレビのニュース番組で、おじいちゃんやおばあちゃんが体育館に段ボールを敷いて、その上に横たわっている避難所の光景を見たことがある方は多いと思います。

それだけを切り取ってみると、避難所が忙しいという感覚はあまり伝わらないかもしれません。

 

しかし、大災害発生直後の避難所で、ずっと寝ていられるのは体調の悪い方や、体の不自由な方だけであると思った方が良いです。動ける方には仕事があります。

 

何かというと、避難所の運営です。

 

避難所は市区町村等の行政機関が開設します。そこに市区町村から行政職員が来ることもありますが、広範囲における災害の場合、各避難所に派遣される支援職員は、多くて数人です。場合によっては全く来られない場合もあります。

 

職員が来られない場合は言うまでもないですが、仮に来たとしても、職員数人で、数百人規模の避難者をさばき、飲み物や食べ物等の物資配布ができるでしょうか。


間違いなく絶対にできません。

 

圧倒的に人が足りないため、そこにいる人が協力して避難所を運営することになります。
防災には自助・共助という考え方が必要です。

 

避難所が学校である場合、学校職員が避難所運営に加わることになりますが、学校職員は24時間休まず働ける訳ではありません。そして、職員もまた被災者です。もし仮に子どもが大けがをしていて付き添う必要があれば、避難所運営どころではないでしょう。

 

よって、避難所では、行政職員や学校職員が当たり前に何でもやってくれるという考えは通用しません。自分で動く必要があります。そして、飲み物や食べ物等の物資が配布されるとしても、発災直後は非常に少ないです。被災者同士が譲り合いの気持ちがないと、あっという間にトラブル発生です。

そして、ケンカをしたところで、ケンカの仲裁をしてくれるような人はそこにはいません。ただでさえ職員の皆さんは忙しいのですから。

 

また、もう一つ避難所の過酷さを極めるのはトイレ環境です。

 

豪雨では大丈夫かもしれませんが、大地震の場合、ほぼ間違いなく水がとまります。
水がとまった時の水洗トイレの悲惨さを想像できるでしょうか。現実はその想像をはるかに超えると思います。

 

汚い話になりますが、ご容赦ください。

 

トイレの水が流れないということは、汚物は当然流れません。流れませんが、人が生きていれば必ずトイレに行かなければなりませんので、汚物がたまったままのトイレで用を足すことになります。最終的には、便器が汚物で溢れます。そしてとてつもなく臭いです。

 

トイレットペーパーがあればまだいい方です。

仮に学校が避難所になっている場合でも、避難者数百人のトイレをカバーできるほど、トイレットペーパーは置いてありません。すぐになくなります。皆自分のもっているティッシュや紙、ハンカチなどで拭くことになります。それらも無くなれば拭くことすらできません。

この過酷な状態でストレスを感じない方がおかしいです。

 

避難所で体調を崩して病院に運ばれる方が後を絶たないのは、このような過酷な環境が裏にあるからです。暑い寒いだけではありません。マスメディアによって伝えられることはあまりありませんが…。

 

では非難しない方がいいのでしょうか。

しかし、自宅が危険な場合はそういう訳にもいきません。


いろいろ考え方があるかもしれませんが、私は経験上「体の不自由な方や、小さな子供がいる場合、避難先は避難所でなくても良い。」と考えています。

 

ではどこに逃げるのかというと、「被害の全くないエリア」です。地震であれば、少し震源地を離れるだけで、全く被害のない場所がたくさんあります。

近隣県でも、遠くの県でもよいので、被害が全くないエリアのビジネスホテルや安い民宿等をおさえて、1~2週間くらいそこで過ごすということです。

 

東日本大震災が発災した直後、私の居た岐阜県もかなり揺れましたが、ライフラインは無事ですし、コンビニはどこも通常営業していました。スーパーで物が足りないという訳でもありません。普段どおりの生活がありました。

 

岐阜県から福島県までは遠いです。

遠いですが、車で一日あれば十分移動できる距離です。


車で一日あれば移動できる距離に、何不自由なく生活できる環境があるのであれば、

そして、もしその移動手段があるのであれば、そこに行くという選択肢を排除する理由がありません。

 

お金はもちろんたくさんかかります。
確かにたくさんかかりますが、ここで使わずして何のためのお金でしょうか。
被災地に留まって病気になるより、百倍マシです。

 

私は、災害の多い日本のインフラ復旧能力は、世界最強だと思っています。
1~2週間被災地を離れて、戻ってきたころには、快適さのレベルは桁違いに上がっています。そこからゆっくり家の片づけを始めても良いと思います。

 

ちなみに、安全なエリアに避難する際の移動のタイミングですが、本当の発災直後はお勧めしません。何故ならどこを通れば被災地を脱出できるのか、この時点では情報がないからです。道がなければ車は走れません。


一番間違いないのは、被災地に物資が届けられ始めたタイミングです。

 

被災地に物資が入ってくるということは、「大きなトラックが、安全なエリアから被災地に入ることができる道がある」ということです。
入ることができたのであれば、出ることができます。トラックを運転してきた方に話を聞くのが最も確実です。

 

今回お伝えした、被災地から離れるというのは一つの手段です。

この手段は万能ではありません。


被害を受けた家を離れて無人にするということは、悲しいことですが火事場泥棒に遭うリスクもあります。その場合は、誰か最低でも一人は被災地に残らなければならないかもしれません。

 

それでも、一つの選択肢としてこの手段は有効です。事実、被災地で同じことを実行されている方はたくさんいらっしゃいました。

 

発災直後は困難な状況で、何も考えられないかもしれませんが、つらい時こそ少しでもストレスを軽減するため、様々な選択肢を持って行動していただければと思います。

それと同時に、現地の被害が少ないことを心よりお祈りします。